Friends08: Yuji Hara Interview Part1

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ヨシオクボにゆかりのあるクリエイターや、様々な分野のオピニオンリーダーらと、デザイナーの久保嘉男が対談を行う「FRIENDS」。今回は、前回の対談相手であるITジャーナリスト・林信行氏の紹介で、3Dプリンタをはじめとする3Dデジタルツールの販売や3D技術を用いた製品開発、プロモーション施策などを手がけているケイズデザインラボに伺い、代表の原 雄司氏に、最新の3D技術やファッションにおける事例などについてインタビューを行った。

3Dプリンタ、3D技術の現在
久保:ケイズデザインラボさんは、どんなことをされている会社なんですか?

:ケイズデザインラボでは、3Dプリンタの販売を本業にしていますが、同時に3Dプリンタや3Dスキャナ等がどのように使えるのかということを示していくための取り組みも行っています。例えば、人に洋服を着てもらった状態で3Dスキャンをして、リアルな服のシワ感まで再現したフィギュアをつくったり、他にも、文化財や工業製品などの3Dスキャンから、アーティストの作品制作のサポートまで、さまざまな活動をしています。また、店舗などの空間における3D技術を用いたコミュニケーションの提案や、さまざまなテクスチャの3Dデータの作成など、新しい事業を行っていくための専門の部署も今年立ち上げました。

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ケイズデザインラボのオフィスにある3Dスキャナー。

久保:この3Dスキャナーは凄いですね。僕は以前にオートクチュールのドレスをつくっていた経験があるんですが、3Dスキャンで採寸できたら、つくり方も大きく変わってしまいそうですね。

:そうですね。さらにここで取った3Dデータを、デジタルファッションという会社が持っている技術と合わせると、それぞれの人の体型に合わせて仮想フィッティングができるだけでなく、その人が洋服を来てウォーキングしている様子までがシュミレートができます。以前に、Perfumeもこの3Dスキャンでデータを取り、そのデータをユーザーがPC上で加工するという企画がありました。そのような展開ができることがデータの強みで、例えば、彫刻作品などにしても、3Dスキャンをすることで何度でも同じものがつくれるし、サイズを変えて出力することもできます。

久保:3Dプリンタと言うと、プラスチックの素材が使われているイメージが強いのですが、布というのは扱えないのですか?

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:現状の技術だと、繊維状のものを使うのはなかなか難しいんです。逆に言うと、今後素材面での制約が取り払われていくと、3Dプリンタが服づくりの分野でも一気に広がっていく可能性があると思っています。

久保:例えば、ダッフルコートのトグルなどが3Dプリンタでつくれたら面白いと思うんですが、木のような素材は使えるんですか?

:完全な木材というのはまだ難しいのですが、例えば、PLAという樹脂に木の端材を混ぜた素材などは使えます。最近3D業界では、複数の素材を同時に使うマルチマテリアルというのがひとつのトレンドにもなっています。

ファッション関係の3Dプリンタ事例
久保:ファッション関係の3Dプリンタの事例としては、どんなものが多いのですか?

:いまはアクセサリーやバッグなどが多いですが、ファッションの分野でも3D技術の活用がどんどん行われるようになっていて、こちらにアイデアを求められるようなケースもとても増えています。現状では、キャンペーンやイベントの際に、打ち上げ花火的に使われるケースも多いのですが、ゆくゆくはより実用的な使われ方がされていくべきだと思いますし、そういうものこそが消費者のニーズにもつながるのではないかと考えています。また、3Dプリンタによって、特定の誰かに向けたものづくりがしやすくなったというのもとても大きなことだと思っています。例えばこれは、僕が3歳の娘の足をスキャンしてつくったサンダルなんですよ。

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久保:売り物にできるくらいの仕上がりですね。

:この程度のゴムサンダルであれば、家庭用の3Dプリンタでつくることができます。最近の家庭用3Dプリンタの中には10万円くらいで買えるものもあります。これらのことを精度が悪いと言う人もいるのですが、仮に自分のためのものをつくると考えると、だいぶ見方が変わると思うんです。このサンダルなんかも、娘自身が足をスキャンされた時のことから覚えているから思い入れも強かったようで、できあがった時には非常に喜んでいましたね。

久保:3Dプリンタでつくったものを量産化することはできるのですか?

:1万個程度のものを、年間通して継続的に売っていく程度であれば量産も可能です。逆に最近は数百万個単位の大量生産をする機会が減りつつあるので、これからは量産にも十分使えるのではないかと思います。生産コストもほぼ材料費だけなので、カーボンなどの素材を使った場合でもひとつ300円くらいの費用でつくることができるはずです。

久保:質感の表現というのは、どの程度まで可能なんですか?

:家庭用のインクジェットプリンタの精度がどんどん上がっていったのと同じように、3Dプリンタも個人のニーズの高まりとともに、性能が急速に向上しています。僕がこの業界に入ったのは30年ほど前なのですが、もちろん当時は3Dプリンタなどありませんでした。その後、小玉秀男さんという日本人が、紫外線を当てることで固まる樹脂を積層させていく成形技術を開発し、それが後の3Dプリンタにつながりました。つまり、3D技術というのは日本人が先行していた分野だったんですが、図面文化が根強く、職人の技術力も高かった日本では、建築などにしても図面さえあれば事足りたんですね。そういうことが仇となり、海外に追い越されてしまったんです。

K’S DESIGN LAB: www.ksdl.co.jp

to be continued…