Friends06: Dai Tamesue Interview Part.2

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ヨシオクボゆかりのクリエイターたちを紹介する「FRIENDS」。番外編となる今回は、前回に引き続き、元オリンピック選手・為末大氏をゲストに迎え、スポーツのおけるクリエイティビティや、スポーツの本質などについて話を伺った。

久保:為末さんはいつ頃からプロとしてやっていこうと思うようになったのですか?

為末:中学生の頃から陸上で食べていきたいと思っていましたが、当時プロとしてのビジネスモデルができていたのは駅伝選手だけで、短距離のプロ選手というのは実質いなかったんですね。僕も少し会社員をしていた時期があったのですが、どうもしっくり来なかったのと、日本初のプロ選手になってみたいという思いがあり、プロに転向しました。野球やサッカーなどと違ってリーグから給料が支払われることはないので、試合に勝って知名度を上げることで、スポンサーについてもらうというのが陸上選手のビジネスモデルになるのですが、最初の頃はどうすれば良いかわからなくてバタバタしていましたね。

久保:アスリートにしろ、サラリーマンにしろ、僕のようなファッションデザイナーにしろ、どんな仕事にもクリエイティビティというのは絶対必要だと思うんですね。陸上競技の場合だと、もっと速い走り方はあるのか、新しい跳び方はあるのか、どんな靴なら速くなるのかということを考えていくわけですよね。

為末:そうですね。陸上の場合は、どういう風に動くのが最も合理的なのかということを考えます。僕も職業柄、馬や魚など動物の動きを見て、速いというのはどういうことなのかと考えたりするのですが、速い動きというのを見ていると、支点となる場所は必ず安定しているということがわかるんですね。それを陸上に置き換えると、手足がいくら速く動いていても、ヘソの位置は安定していた方が良くて、そのためにはどんな練習法が良いのかということを考えていくんです。

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yoshio kubo 14-15A/W Collection

久保:走り高跳びなんかも昔といまでは跳び方が違いますよね。

為末:以前の走り高跳びは「はさみ跳び」が主流でしたが、あるアメリカ人選手が「はさみ跳び」の練習をしている過程で体がだんだん横向きになり、最終的に背中から落ちるようになって、こっちの方が高く跳べるんじゃないかと気づいたんですね。そして彼は、そこから背面跳びの練習をこっそり続けて、オリンピックで金メダルを獲ったんです。それが大きな転換期となって、いまは全員が背面跳びをしていますよね。実は、走り幅跳びの世界でも、前転跳びというものを開発した人がいて、結構距離を伸ばしていたのですが、失敗して頚椎を痛めてしまう選手が出たことで禁止になりました。少しクレイジーな方法を考える人が一人出てきて、それを見た周りの選手たちが真似したり、分析したりすることで技術が発展していくということはよくあります。

久保:最初にアバンギャルドな発想を持った人が出てきて、そこから新しいスタンダードができるという流れはファッションの世界とも似ていますね。僕は今回のコレクションを考える上で、普通のスポーツウエアを作っても面白くないと思ったので、まずは誰も知らないようなスポーツを見つけるということから始めたんですね。調べていくと、フリスビーでアメフトのようなことをしている競技(アルティメット)などがあったりして、とても面白いと感じました。

為末:「スポーツ」の語源は、ラテン語の「deportare」という言葉だと言われていて、もともとの意味は「気晴らし」や「楽しみ」なんですね。「deportare」には、「没頭できる非日常的な営み」という意味合いがあるので、身体を使う運動だけではなく、歌を歌ったり、詩を朗読するということも範疇に含まれるんですね。だから、欧米ではスポーツというと娯楽やリクリエーションとしての側面が大きいのですが、一方で日本というのは、体育など教育的な要素が強い珍しい国なんです。日本には、努力と根性がないとスポーツじゃないという感覚がありますが、欧米ではチェスなどもスポーツに近く、要は「遊び」が基本なんですね。「スポーツ」を遊びの感覚でとらえていく久保さんの発想にも近いものがあって面白いと思います。

久保:為末さんは、「クイズ$ミリオネア」で獲得した賞金を元手にして、丸の内で陸上イベントをされたそうですが、例えば、ジーパンを履いて100m走を競い合うようなストリートファイト的なものがあっても良いと思うんです。

為末:たしかに、決められたユニフォームと競技場で行われるスポーツというのは、少し特殊な印象を持たれがちですよね。丸の内のイベントにしても、そうしたイメージを崩したくてやったところがあるんです。例えば、フィギュアスケートというのは、氷上の演技を採点する「スポーツ」と思われていますが、一方で人前で演奏をして順位が付けられるようなものは「アート」の方に振り分けられますよね。でも、両者には厳密な差というものはないですし、消費カロリーにしても、オペラなどになるとスポーツとあまり変わりません。そう考えていくと、何がスポーツで何がアートなのかという線引きは曖昧になってきますよね。すべてをスポーツと言い切る必要はないですが、曖昧な領域があるということをもっと考えていった方が面白くなると思うんです。

Dai Tamesue Homepage: tamesue.jp

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