Friends06: Dai Tamesue Interview Part.1

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ヨシオクボゆかりのクリエイターたちを紹介する「FRIENDS」。今回はその番外編として、シドニー、アテネ、北京と3大会連続でオリンピックに出場し、現在は多岐にわたる活動を展開している為末 大氏が登場。先日発表された14-15A/Wコレクションで「スポーツエレガンス」をテーマにしたデザイナー久保が、ユニフォームにまつわる話をはじめ、スポーツに関するさまざまな疑問を投げかける。

久保:今回スポーツをテーマにしたコレクションを発表したのですが、僕らはファションブランドなので、スポーツメーカーさんとは違うアプローチで、ファッションが好きな人たちに興味を持ってもらえる表現を考えていったんですね。一方で、スポーツ選手が着るユニフォームにもさまざまな丈のショートパンツやレギンス、切り替えがあるパンツなどがありますが、これらはどういう基準でデザインされているんですか?

為末:どうなんでしょうね。例えば、陸上競技の選手が、身体にフィットしたタイツを履くようになったのは、96年のアトランタ五輪くらいからで、それまではもう少しゆとりのあるランニングウエアを着ていました。おそらく空気抵抗などが考慮され、タイトなデザインになったのだと思いますが、走っている時というのはあまり空気抵抗は感じなかったりするんです。逆に僕は締め付けられる感じが嫌だったので、オリンピックの時は普通のランニングシャツとショートパンツで出場していましたね。

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久保:極端な話、ユニフォームを何も着ない裸の状態が一番速かったりするのですか?

為末:理屈上はそうかもしれないですね。水泳の場合は素肌よりも滑りの良い素材というのがありますが、陸上の場合は、ユニフォームによって大きくスピードが変わるということは少し考えにくいです。ただ、僕らは走る時に、腹圧によってお腹を風船のように膨らませて腰を安定させるので、お腹の辺りを締めるようなユニフォームがあると、100m走などでは多少タイムが速くなるかもしれません。実際に、剣道や相撲、レスリングなどの道着やユニフォームはお腹が締まるようになっているんですよね。

久保:例えば、牛は赤い色を見ると興奮すると言われていますが、人間の場合も着ているユニフォームのデザインや色などがパフォーマンスに影響を及ぼすこともあるんですか?

為末:選手によっては自分の好きな勝負色みたいなものを持っている人もいますよね。人間も動物なので、覚醒するための色や匂いというのはあると思いますし、アンモニアの匂いによって覚醒するといって、競技前に嗅ぐ人なんかもいるんですよ。

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yoshio kubo 14-15A/W Collection

久保:それは面白いですね。少し話は変わりますが、為末さんは普段履きのスニーカーなどはどうやって選んでいるのですか?

為末:基本的には見た目で選びますが、現役選手の中にはつま先と踵の高さを気にする人もいます。普通のスニーカーは踵の方が高くなっているのですが、人によっては、裸足の時と同じフラットな状態を保てるような靴が良いと言うんですね。やっぱり普段歩いている時間が最も長いので、こだわる人はこだわるようです。これまでスポーツ選手というのは、ファッションには興味がない人が多かったのですが、ちょうど僕らくらいから下の世代には気を使う人も増えてきて、やはりJリーグの影響が大きいのかなと思っています。

久保:たしかにサッカーのユニフォームなどはファッション性が高いものが多いですよね。NBAの黒人選手のソックスなどを見ても、どういう発想でこれを選んだんだろうというような斬新な履き方をしている選手もいますが(笑)、その方が見ている側も楽しいですよね。例えば、陸上競技にしても、高速で足が回転することでグラフィカルに見えるような靴下なんかがあったら面白いと思うし、全体的によりエンターテインメイト性があると良いですよね。

為末:本当にそう思います。ただ、陸上競技の場合、どうしても削いでいく方向に向かっていくので、ユニフォームなどはよりシンプルになっていくんじゃないかと。むしろ面白くなる可能性があるのは、演出の部分なのかもしれないですね。以前に見た陸上競技の大会では、100m走の決勝の前に30分も時間が空いていたんですが、ファイナリストたちがひとりずつ紹介され、ボクシング選手のようにスポットライトに照らされて入場してくるんですね。そして、いざスタートの時が来ると場内の照明が消え、BGMなども止まって、事前に録音された心臓の音が聴こえてくるんです。こういう演出があると30分という待ち時間がとても面白く感じられるし、見え方も変わってきますよね。オリンピックやパラリンピックでどこまでこういうことが許されるかはわからないですが、いまはプロジェクションマッピングなどもあるし、色々な演出ができるのかなと思います。

Dai Tamesue Homepage: tamesue.jp

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to be continued…