Perspective06: Fashion on Sports Films

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デザイナー久保嘉男の服づくりの哲学やインスピレーションソースなどを紹介する「Perspective」。今回は、14-15A/Wコレクションのテーマ「スポーツ」が題材になっている映画にスポットを当て、映画の中のファッションについて、久保独自の視点で綴る。


僕は映画をよく見るのですが、映画の中のファッションに影響されることはとても多いです。14-15A/Wでスポットを当てたスポーツがテーマになっている映画にも、刺激を受けたものがたくさんあります。僕は特にボクシングが大好きなんですが、ファッションショーをつくっていく時は、常に見に来てくれる人たちが映画『ロッキー』を見た後のような高揚感を持って帰ってもらえるように意識しています。

『ロッキー』などもそうですが、ボクシング映画に出てくる登場人物が、動きやすいようにスエットを切りっぱなしにして、その下からTシャツが見えていたりすると、カッコ良いコーディネートだなと感じるんです。こういうボクサーならではのラフな着こなしを、ファッションとして表現するためにはどういう着丈感が良いのかということを考えていくことが、洋服のデザインにつながっていくこともあります。

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『ロッキー』(1976)

僕が高校2年生くらいの頃は、マイケル・ジョーダンなどの影響でバスケットボールが流行っていたんですが、『ハード・プレイ』というバスケットボール映画も記憶に残っています。白人と黒人のコンビがストリートバスケをするという話なんですが、映画の中のファッションがとても良いんです。黒人が普段どんなファッションをしているのかというのを知りたくて、黒人が出てくる映画をよく見ていた時期があったんですが、この映画の中で彼らが着ているスポーツウエアやスニーカー、ソックスの履き方などすべてがカッコ良いんです。

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『ハード・プレイ』(1992)

アメフト映画では『ロンゲスト・ヤード』が好きです。有名なアメフト選手が刑務所に入れられてしまい、そこでアメフトチームのコーチをさせられるという割とベタなストーリー展開なんですが、アメフトの要素は今回のコレクションにも入れていて、その参考になりました。例えば、アメフトのユニフォームの背番号ひとつとっても色々なデザインがあって、そうしたディテールを確認するために映画を参考にすることがよくあるんです。

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『ロンゲスト・ヤード』(1974)

『ロンゲスト・ヤード』は、2005年にもリメイクされているんですが、リメイク版で主演しているアダム・サンドラーが僕は大好きで、彼の映画はほとんど見ています。アダム・サンドラーは他にもいくつかスポーツ映画に出ていて、『俺は飛ばし屋』というゴルフ映画も最高なんです。もともとアイスホッケーのプロを目指していた主人公のギルモアが、ひょんなことからゴルフトーナメントに参加することになるのですが、なぜかアイスホッケーの格好でラウンドするんです。ゴルフと言えばマスターズのグリーンジャケットなどが有名で、紳士のスポーツと言われていますが、その中でひとりだけオリジナルのファッションや打ち方をしている主人公がとても面白いんです。

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『俺は飛ばし屋/プロゴルファー・ギル』(1996)

トム・クルーズ主演の『トップガン』には、ビーチバレーのシーンがあるのですが、この時にトム・クルーズがかけているサングラスが凄くカッコ良いんです。上半身裸でサングラスをかけているだけなのですが、こういうアイテムの見せ方というのは映画ならではだなと感じます。

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『トップガン』(1986)

これまで見た映画の中でもBEST5に入るくらい好きな『スナッチ』には、最後に闇ボクシングのシーンがあります。上半身裸で、短パンではなくスラックスにニューバランスを履いて殴り合うブラッド・ピットが、最高に痺れるんです。

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『スナッチ』(2000)

シルベスター・スタローン主演の『オーバー・ザ・トップ』はアームレスリングの映画で、公開当時は果たしてどのくらいの人がキャップを後ろにかぶって腕相撲をしたかわからないほど影響力があった作品です。スタローンがかぶっているあのキャップはどんなデザインになっているのかと想像がとても膨らみましたし、何よりキャップのツバを後ろに回す男の仕草に憧れましたね。

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『オーバー・ザ・トップ』(1987)

これまでに僕は、映画の中に出てくる登場人物のファッションにとても刺激を受けてきました。映画ならではの空気感や独特の陰影の中で、個性的な登場人物が身にまとっているファッションは、自分も同じ格好をしたいと思わせてくれるものですし、自分の服づくりにも大きなインスピレーションを与えてくれる存在なんです。

The End