Friends04: Toyoki Adachi Interview Part.2

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ヨシオクボゆかりのクリエイターたちを紹介する「FRIENDS」。前回に引き続き、テキスタイルブランド「nowartt(ノワート)」を手がける足立豊樹氏に、ヨシオクボとのコラボレーションや、独自のテキスタイルデザイン、今後の展望などについて話を聞く。

久保:ヨシオクボでも12-13A/Wから一緒に仕事をしているのですでにだいぶ時間が経ちますが、一番大変だったのはどのシーズンですか?

足立:やっぱり最初のシーズンですね。最初の打ち合わせの時に、資料を見せてもらいながら、久保さんがやりたいことを話して頂きましたが、「渡り鳥」というキーワードがあるくらいだったんですよね。「僕はこんな洋服を作るから、それに合うようなテキスタイルを作ってほしい」という感じで、そういう依頼は初めてでした(笑)。おそらく久保さんの中では自分が作る洋服のイメージは明確にあったと思うんですけど、まだお互いのことがわからない状態のなかで、どう表現していこうかというのはかなり考えましたね。

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yoshio kubo 12-13 A/W Collection

久保:上げてくれたテキスタイルを見た時は本当に感動しましたし、ショーが終わった後も「この柄を描いたのは誰だ?」とかなり反響があったんですよ。僕は、テキスタイルというのは色のバランスやグラフィックのレイアウトがまずは大事だと思っていて、足立さんのテキスタイルはそのバランスが凄く心地良いんですよね。

足立:テキスタイルというのは、モチーフの描き込み以上にバランスが大事で、絵が描かれていない部分をどんなバランスで残せるかが肝だと思っています。しかもテキスタイルは”リピート”させないといけない。モチーフというのは最初に打ち合わせした時点で80~90%くらいはイメージできるので、あとはそれを落とし込んでいくだけなんですね。グラフィックとしていくら良くても、それをつなげた時や洋服になった時にどう見えるかが大事なので、一番時間と気を使うのはリピートなんです。

久保:足立さんは、シルクスクリーンで一版ずつ版分けしていくようなトラディッショナルな技法を知りながら、同時にコンピュータを使ったデジタル加工もしていますよね。完全に次世代のテキスタイルデザイナーとして新しいジャンルを作っているし、無敵に近いですよね(笑)。

足立:僕らは、ちょうど学生の時にコンピュータが入ってきた世代なので、デジタルとアナログ両方に対応できて、それは良かったなと思います。僕がいた関西は、京都の着物文化の流れから図案家さんが多いんですが、彼らは大きな紙に絵を描いていくんですね。僕もそれを練習したことはあるんですが、どうしても色々な制限が出てきてしまうんです。例えば、画用紙に描いた花の柄を服の上ではもう少し小さく見せたいということになったら、一から描き直さないといけない。手描きしたものをデータ化してPC上で扱えればもっと幅は広がるし、効率も良くなるんですよね。とはいえ、モチーフを一枚ずつ手で描いて、色分けをしていくというプロセス自体はアナログもデジタルも同じ。久保さんの仕事でも、トレーシングペーパー40枚くらいを重ねてひとつのグラフィックを作っていますしね。

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久保:大きいボックスにパンパンに入っていますよね(笑)。でも、こうして時間をかけて作ってきたものがちゃんと評価されて売れるようになってきているのは凄く良いなと思っています。メンズブランドでテキスタイルに力を入れているところはあまりなかったから切り口としても良かったと思うし、気づけばyoshiokuboは足立さんのコレクションになりつつありますよね。

足立:いやいや(笑)。でも、久保さんからの依頼はいつもやったことのないものばかりなので、最初にディスカッションをした後にどうやって作ろうかと毎回悩みますね。

久保:今後足立さんが目指していることはありますか?

足立:いまnowarttでは、久保さんとも一緒にやらせてもらっているフルカラーのインクジェットプリントをファーストラインに位置づけて、「peacecamo」などのレギュラーラインはシルクプリントにしているんですね。いまはインクジェットの方がコストも数倍高いんですが、今後数年でそれがシルクと同じくらいになると思うんです。そうなるとフルカラーのテキスタイルが一気に増えて、テキスタイルデザインもどんどん変わっていくはずです。だからいまのうちに色んなノウハウを頭に叩き込んでおいて、みんながインクジェットを始める頃には、また違うプリントや技法を使えていけるといいなと。最終的にどうしたいかということもよりも、常に新しいことをやりたいという思いが強いですね。あと、たとえ無地でもひとつのしっかりしたテキスタイルになるような「色」を作っていきたいというのもあります。色というのはチップでは出せても素材によって全然変わってしまうし、とても難しいものなんです。だからこそ次のステップとしては、自分が作った色に名前がつくようなものができたらいいなと思っています。

nowartt Homepage: nowartt.com

The End

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