Friends04: Toyoki Adachi Interview Part.1

adachitop1

ヨシオクボゆかりのクリエイターたちを紹介する「FRIENDS」。今回は、12-13 A/Wシーズン以来、ヨシオクボのテキスタイルの多くをデザインしている足立豊樹氏が登場。前半では、ピースフルなモチーフをフルカラーのインクジェットプリントで表現するなど、独自の展開を見せるテキスタイルブランド「nowartt(ノワート)」が生まれた経緯に迫る。

久保:足立さんはどういうきっかけでnowarttを始めたんですか?

足立:もともとは、軍事用に作られたカモフラージュ柄というものを使って、平和のメッセージを伝えるものが作れないかというのがきっかけです。その時はまだnowarttというブランド名はなくて、「peacecamo」というロゴを先に作ったんです。とはいえ、テキスタイルというのはとても奥深いものですし、カモフラージュだけでは表現できないものもたくさんあるので、以前からお付き合いがあったデザイナーの野澤広志さんと一緒に、新しいテキスタイルのブランドを立ち上げようということになりました。そこで「now art」と「no war」を組み合わせた造語をブランド名にして、ピースフルなモチーフをベースにしたテキスタイルを作っていくということを始めたんです。

design-6A
textile design by nowartt

久保:以前は大阪で活動していたんですよね。

足立:はい。26歳の時に独立して、大阪で会社を立ち上げました。学校ではテキスタイルを学んだんですが、その後は3年間くらい大阪府の仕事をしていて、地域振興のために使われるタオルや毛布などの図案を描いていました。もともと洋服が好きだったので、ファッション関連の仕事をするために独立したんですが、ちょうどその頃はドメスティックブランドがこぞってプリントTシャツを作るようになった時代でした。それまではアメカジっぽいロゴTシャツなどが多かったのですが、その頃からアート性の高いグラフィックTシャツが増えていったんですね。ただ、こういうものは、いくらグラフィックが良くてもTシャツになると大きくイメージが変わることもあるんです。それがイヤでだったので、工場と密接にリンクしながら、自分が描く絵と商品になった時のギャップをなるべく埋めようとしていましたね。

久保:もともとテキスタイルデザイナーになりたかったんですか?

足立:いや、実は保父さんになりたかったんですよ(笑)。子供が大好きだったので、保父さんや幼稚園の先生を考えていたんですけど、そういう仕事だとその地域にいる子供しか相手にできないじゃないですか。そう考えた時に、子供服やオモチャを作れば、自分の地域や国だけではなく、世界中の子供が喜ぶ何かができるんじゃないかなと思ったんです。先ほどの「peacecamo」の話にもつながるんですが、結局戦争の影響を最も受けてしまうのは子供なんですよね。そういう意味では、大きな括りではもともとやりたかったことに近づいてきているのかなと。

久保:足立さんは、僕がやりたいことをあれやこれや伝えると、かなり高い確率でイメージ通りのものを上げてくれるんです。色々やり取りをした挙げ句、結局はじめに足立さんが出してくれたものに戻るということも多いんですけど、僕が考えていることをすべて先回りしてやってくれているというのが凄いなと。

paris-1

足立:久保さんと一緒に色々探りながらアイデアを考えていくというやり取りが楽しいんですよね。5年ほど前にパリで展覧会にしたことがあって、それは人間国宝の人が作った紙を使って、5名のアーティストが作品を制作というものだったんですが、僕はグラフィックアーティストとして参加しました。その時は、煙を撮影した写真をコラージュして、そこに目と爪を手描きした龍を作り、色んな方に評価して頂けて、勉強にもなったんですが、作品というのはそこで終わりなんですよね。それよりも、例えば久保さんのようなデザイナーさんやパタンナーさんと一緒にものを作って、しかもそれがショーで自分の予想を越えるようなものになるという方が自分としては好きなんです。

久保:足立さんはどんなタッチにも対応してくれるところも素晴らしいですよね。いままでで一番難しかったモチーフは何ですか?

足立:ロココ調の花柄などはとても難しかったですし、変わったものではアメコミなんていう依頼もありましたね(笑)。やっぱり初めてやるものはすべて難しいですが、うちの会社はすでに設立から14年経っていて、nowarttを始める3年前まではお客さんのニーズに応えるということをしてきたので、僕もスタッフもどんなものでも描かざるを得なかったんですね。いまになって思うと、すぐに自分のブランドを始めずに、そういう仕事を続けてきたことは大きかったなと思います。

nowartt Homepage: nowartt.com

to be continued…