Friends03: Shunichi Mugita Interview Part.2

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yoshio kuboにゆかりのあるクリエイターたちに迫る「FRIENDS」。前回に引き続き、日本を代表するファッションジャーナリストである麥田俊一氏を迎え、仕事に対するこだわりやファッションショーの未来などについて語ってもらった。

久保:僕はアート作品などを見る時に、どのくらいの時間をかけて作られているのかということをひとつの判断基準にしているんですが、麥田さんがファッションショーを見る時には、何が判断基準になるのですか?

麥田:ひとつは心が動かされるかどうかですね。なぜ心が動くかということがもっと大切だと思うんですが、そこは結構難しいところなんですよね。例えば、新しいか新しくないかということを考えた時に、見たことがないもの=新しいものなのかというと、見たことがなくてもいまっぽくなければ、それは新しくないわけです。じゃあ、いまの気分というのはなんだろうと考えると、それも一言で表現するのは難しい。そうやって自問自答をしていくわけですが、結局は心というか、魂が感じられるかどうかということが一番なんですよね。

久保:面白いですね。

麥田:ジャーナリストという仕事において、そのものさしが正しいのかはわかりません。ただ、シーズントレンドを分析するようなことだけではなく、他の方にはできないやり方でショーを見たり書いたりしたいという思いがあります。そういう形でファッションショーやデザイナーの方と向き合って、それが仕事になるならそうしたい。最近はそういうスタンスで仕事をしているんですが、例えば取材とは別の機会にショーの感想などを聞かれた時にも、良い悪い関係なく正直にお伝えするようにしています。感想を聞かれたら、相手の前では良いことを言うのが大人の世界の社交辞令だとは思うんですが、10回聞かれて10回とも良かったと言い切れる自信が自分にはない(笑)。いまのところそれで相手が憤慨したり、ショーに呼んでくれなくなったりしたことはないので、良いお付き合いをさせてもらっているのかなと。ただ、本来はこういう接し方をしてはいけないと思っているところもあるんです。

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Photo: 佐藤修造

久保:それはなぜですか?

麥田:人から言わせると、私は愛情を持ち過ぎるらしいんです。ショーが終わった直後に、バックステージに行って感想を伝えたりすることもあるんですが、応援をするという行為そのものが取材者と取材対象者の関係としては適切ではない気がするし、ジャーナリストとしてはもっと客観的に接した方がいいと思うんです。ただ、デザイナーの方が私にショーの感想を聞いてくる時は、挨拶程度のやり取りとは違うものを求めてくれていると信じていますから、こういう人間がひとりいてもいいのかなと。

久保:最近は、新しいテクノロジーを使ったショーなども出てきていて、ファッションショーという形も時間とともに変わってきていますよね。将来的にはショーをするブランドがもっと減っていくかもしれないとか、ショー自体が古い表現になってしまうのではないかと考えることもあるんですが、10年後、20年後にファッションショーはどうなっていると思いますか?

麥田:ファッションデザイナーがいて、彼らがショーをやりたいと思っている限り、続いていくと思いますよ。例えば、今後誰でも簡単に洋服が作れる技術ができて、自分が着るものを自分で作るような時代になってしまったら別ですが、デザイナーがいる限り、やっぱり彼らは自分が作った世界観や洋服を見せたいわけですからね。デザイナーというのはみんな良い意味でエゴを持っていて、そのエゴにどれだけ共感する人間がいるのかということがすべてだと思うんです。自分が買いたい洋服を確認するためだけのショーなんてつまらないし、デザイナーの顔が見えて、その人がいま何を考えているのか、どんな気分でいるのか、今度はどうやって我々を驚かせてくれるのかということを会場に足を運ぶ側は期待するわけです。デザイナーの他にも、演出をする人、空間を作る人、モデルを調達する人、PRをする人などあらゆる人が15分程度のショーのために動いていて、それだけのエネルギーが集まったものが完成すれば、その時間を共有できたバイヤーやジャーナリストなどは立ち上がって拍手をするし、デザイナーに会いに行きたくなるはすです。

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Photo: 佐藤修造

The End

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