10 years, 10 words #3: 2008〜

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今年ブランド設立10年目を迎えたyoshio kubo。ブランドの歴史をデザイナー久保嘉男が語る10のエピソードから紐解く。

7.Fashion Show
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初めてショーをやった09S/Sシーズンは、やっぱりブランドとして大きな転換期でしたね。ショーにはずっと興味があったんですけど、始めるからには5年、10年と続けていかなくてはいけないという思いがあったんです。08年にデビューショーを無我夢中でやって、2,3回目と続けていくなかでお客さんもたくさん来てくれるようになったんですけど、ショーをやる際に常に大切にしているのは、エンターテインメント性なんです。ブランドを始めた頃から自分がやりたいことは変わっていなくて、それは人を楽しませたり、驚かせたりすることなんですよ。以前にスタントマンをテーマにショーをした時に本物の火を爆発させたりしたんですけど、これとかは象徴的ですよね(笑)。例えば、映画の『ロッキー』を見た後に、主人公になり切っちゃったりするじゃないですか。そういう余韻が残せるショーにしたいなと常に考えているんです。

8.Team
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ショーを始めてからスタイリストの望月 唯さん、演出家の辻井宏昌さんなど、毎回同じスタッフに協力してもらっているんですが、僕はひとつのチームでずっと続けていくことが好きなんですよ。変わらないメンバーでずっとやっている自分たちに酔っているわけではないんですけど、ひとつの出会いをきっかけに、同じチームでひとつのプロジェクトに取り組みながら、ステップアップしていく感覚を共有することが昔から好きなんです。彼らはみんな自分にはないものを持っている人たちだし、仕事を頼んで本当に良かったなといまだにずっと思っています。

9.Music
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ファッションショーをやるようになって、初めて音楽とファッションが混ざった独特のライブ感を体験した時は凄く感動しました。過去にDJ KRUSHさんをはじめ、さまざまなアーティストに協力して頂いているんですけど、会場に音が響き渡っていく感じとかは他では味わえないですし、音楽と洋服がミックスされるとこんなにカッコ良くなるんだと。それまで僕は演劇とかはあまり観に行ったことがなかったんですけど、こうしたライブの表現というのは、その場でしか味わえない醍醐味があるんですよね。この時代にファッションショーは本当に必要かという話もよく出ますけど、このライブ感というのは他には絶対ないものだと思うんです。

10.Future
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ブランドを始めて今年で10年目になりますが、これからは自分の違う側面を見せていかないといけないなと思っています。これまでずっと「服とは何ぞや?」ということを考えながら、常に新しいディテールやシルエットというものを考えてきていて、それはこれからも変わらず追求していきたいところなんですが、ブランドが次のステップに進むために、スタンダードでリアリティのある服作りということも意識していこうと数シーズン前から本気で考え始めるようになりました。研ぎ澄まされたオリジナリティを保ちつつ、みんなの気持ちに近づいていくような大人の服作りというものを意識し始めていて、これからの数年間はそれに取り組んでいこうという心境にあります。ブランド10年目を機にオフィスも移転しましたし、このyoshiokubo.jpも含め、ここからまた新たなスタートが切れたらいいなと思っています。