先日東京で発表された2017年春夏シーズンのランウェイショーの前に、以前の仕事場があったニューヨークに足を伸ばしたデザイナーの久保。ブランドロゴをリニューアルするなど、心機一転して臨んだランウェイショーを前に、ブランドの原点とも言える地を訪れた久保が、その理由と心境について語る。
先日開催した東京でのショーの前に、パリで展示会を行ったのですが、その足でブランドを始める前に働いていたニューヨークに行ってきました。ブランドを始めてから12年が経ったいま、スタートの地とも言えるニューヨークで、改めて自分を見つめ直したいという思いがあったんです。
ニューヨーク時代の仕事場。
ニューヨークのブルックリン橋。
ニューヨークでは、当時住んでいた家から、地下鉄に乗って会社に行くまでの道のりを改めて通ってみたのですが、当時はその道中で自分のブランドについて毎日思いを巡らせていました。いざそのルートを通ってみると、住んでいた街や当時関わりがあった人たち、さらに地下鉄のプラットフォームや自分がよく着ていた服や靴のことなど、本当に驚くほどさまざまなことが思い出され、右も左もわからないまま走り始めた当時の思いも蘇ってきました。
当時よく通っていたキューバ料理屋。
懐かしいサンドイッチ。
それからすでに10数年が経ち、もちろん洋服の知識や技術、デザインに対する考え方などは成長したと思いますが、一方で、日々の仕事に追われる中で、ギャラリーなどで当たり前のようにアートに触れていたニューヨーク時代のライフスタイルや、ブランドを立ち上げた頃の初心のようなものを忘れそうになってしまうことがあります。今回、ニューヨークに行ったことで、こうした場に身を置いて、失われつつあるものを取り戻すということはとても大事なことだと改めて感じることができました。そして、初心に戻った状態でフラットに臨むことができたのが、先日発表したランウェイショーだったんです。
ニューヨーク時代に住んでいた場所。
今回のニューヨーク滞在ではミュージアムなどにも足を運んだ。
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