Friends09: Masachika Numata Interview Part1

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ヨシオクボにゆかりのあるクリエイターや、様々な分野のオピニオンリーダーらと、デザイナーの久保嘉男が対談を行う「FRIENDS」。「Wearable Tokyo」をコンセプトに、カジュアルウエアとランニングウエアを軸に編集したユナイテッドアローズによる新機軸セレクトショップ「EN ROUTE」のクリエイティブ・ディレクター、沼田真親氏が登場。ヨシオクボのアイテムも数多く取り扱う「EN ROUTE」の新店舗として、先日オープンしたばかりの二子玉川店で、ショップのコンセプトや概要、空間づくりのポイントなどについて話を聞いた。

久保:二子玉川のお店は初めてお伺いしましたが、素晴らしい空間ですね。設計はどなたがされているんですか?

沼田:「EN ROUTE」のコンセプトは「Wearable Tokyo」で、東京そのものを着こなすというようなイメージなのですが、その世界観を体現していただけるのではないかと思い、スキーマ建築計画の長坂常さんにお願いをしました。長坂さんとは初めてお仕事をしたのですが、素材そのものの個性を活かすことが得意な方で、今回も天井を取りはらい、必要最小限の建築資材のみを使い、インダストリアルでサッパリしたイメージの空間になっています。全体としては、大きなボックスのような形をしたお店なのですが、お客様の回遊性を高めるために、エントランスを入った時にすべてが見渡せるのではなく、あえて視線を遮ることで、その奥に何があるんだろうという興味を喚起できるような空間にすることも意識しました。

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EN ROUTE 二子玉川

久保:天井を取っているのでとても開放感がありますし、ダクトなどがむき出しになっていて、近未来的でどこか宇宙っぽいイメージですね。

沼田:僕らも初めてこれを見た時に、「ギラギラじゃん!」と感じました(笑)。断熱材などが巻かれているのでこのような質感になっているそうなんですが、これも東京らしいなと思い、あえて下から照明を当てて強調しているんです。

久保:そうなんですか、面白いですね。沼田さんと最初に打ち合わせをした時に、東京の観光名所のようなお店にしたいという話も出ましたよね。

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沼田:海外からのゲストが東京に来た時に足を運びたくなるようなお店でありたいということは、当初から考えていました。パリやロンドンなど、世界の他の都市にあるお店と似ているものではなく、海外の方たちに、東京っぽい店を見つけたと感じてもらえるようなショップにしたいなと。

久保:商品ストックも隠さずに、むき出しになっているんですね。

沼田:他に置く場所がないので、ストックも見せてしまおうと(笑)。これは、長坂さんのコンセプトでもあるんですが、洋服で言うとインサイド・アウトというか、縫い代を見せてしまうような感じですよね。普通であればまずやらないことですが、ブランドを絞り込んでいることもあって、シューズの箱なんかをそのまま並べていても意外と様になるし、ストックもしっかり整頓しておくように常に心がけています。

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久保:沼田さんはこれまでにも「UNITED ARROWS green label relaxing」をはじめ、色々なショップに関わってきたと思いますが、お店づくりではどんなことを大切にしているんですか?

沼田:全体的に装飾過剰にせず、シンプルにまとめるということは意識しているかもしれません。お店というのは、あまりがんばり過ぎてしまうと、気軽さ、買いやすさというものが失われてしまうんですね。「green label」の話で言うと、特にレジ周りにはこだわっていました。レジというのは金銭授受をはじめ色々なコミュニケーションが生まれ、お客様が最も緊張したり、気持ちがざわつく場所なので、できるだけリラックスしていただけるように、落ち着けるリビングルームのようなイメージを意識しました。特に「green label」の場合は、リラックスというのが全体を貫くテーマだったということも関係しています。「EN ROUTE」については、もう少しボルテージを上げた雰囲気を大切にしています。

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EN ROUTE 二子玉川

久保:直接こういう説明を聞くと、なおさら買い物が楽しくなりますね(笑)。

沼田:すべてのお客様に細かい説明をすることはできないというのもありますが、僕らとしては、コンセプトについて言葉で説明をすることよりも、この空間に来ていただいたお客様に直接感じ取ってもらえるような前準備がいかにできるかということを大切にしています。久保さんのコレクションを初めて見た時も、ブランドのコンセプト云々は別にして、ピンと来るところがありましたし、ものを媒介にして感じ取るということがコミュニケーションの肝なのかなと。もちろん、接客の際にはブランドや素材の説明などもさせていただきますが、本質的には、直接見たり触れたりすることから判断していただくことが一番だと思っています。

EN ROUTE: enroute.tokyo

to be continued…