yoshio kuboのアイテムの中から毎回1点をピックアップし、その背景や制作意図などについてデザイナー久保が語る新シリーズ「Details」。今回は、2014-15 F/Wコレクションの中から、独特のシルエットが特徴のタックパンツを紹介する。
ーこのパンツの特徴を教えて下さい。
大きな特徴は、通常サイドに入るタックが、センタープリーツのように処理されている点です。僕は、いつも自分でパターンを引いているので、どこをどういじると面白いシルエットがつくれるかということを常に考えているのですね。今回のパンツも、タックをセンターに持って来たらこれまでにない形がつくれるのではないかという発想から生まれました。実際に履いてみると、通常のパンツにはないふくらみが生まれ、特に横から見た時のシルエットは、他のタックパンツにはない独特のものになっていると思います。
ーシルエット以外でこだわったポイントは?
フロントとバックで色を変えたことや、股上を深く取っている点、クロップド丈にしている点などです。また、今シーズンはスポーツがテーマになっていることもあり、ストレッチ素材を使っています。スラックスなのに実はストレッチが入っているという点も自分としては面白いと思っています。
ーコーディネートについては、いかがですか?
スニーカーと合わせるということがポイントだと思っています。最近は、ショーでもスニーカーと合わせたコーディネートにすることが多いのですが、フルレングスのスラックスとスニーカーはあまり相性が良くないので、このパンツではクロップド丈を採用したという経緯があります。また、股上を深く取っている点もそうなのですが、このパンツが街中で履かれているイメージを思い浮かべながら、モードとストリート感覚をミックスしていくことを心がけました。トップスについては、タイトなものと合わせることで面白いボリューム感が生まれるのではないかと思います。
ー今シーズンはスポーツがテーマになっていますが、デザインと機能のバランスについてはどのように考えましたか?
為末大さんと対談をした時にも話に出ましたが、今回のコレクションをつくる上で、究極のスポーツウエアというのはどんなものなんだろうということをずっと考えてきました。純粋なスポーツウエアというのは、次の一動作をどれだけ大きく取れるかということが大切なポイントになると思うんですね。それを追求しすぎたあまり、使用が禁止されてしまったSPEEDO社のスイムウエアが以前に話題になりましたが、こういうギリギリアウトのようなものを考えていくというのはとても大切な姿勢で、自分たちが洋服をデザインする際にも忘れてはいけないことです。ただ、僕らがつくる洋服はベクトルが少し違います。例えば、僕らがジャケットをつくる際には、トワルの段階でどこまで手が上げられるかということも検証するんですが、そこで大切なことは、普段生活しているなかでどこまで手を上げるのかということを想像することだと思うんですね。生活にストレスを感じさせない機能性というのは最低限必要ですが、僕たちがまずやらなくてはいけないことは、新しいデザイン、シルエット、素材を開発することだと考えています。
The End