先日、渋谷ヒカリエ Hikarie Hall Aで開催されたyoshio kubo 14-15 Fall & Winter Runway show。スペイン・アンダルシア地方からインスパイアされた前回のショーから一転、スポーツエレガントをテーマに据え、ショー音楽にDJの世界大会『DMC World DJ Championships』で前人未到の5連覇を達成した経験を持つターンテーブルユニットKireek、ヘアにアーティスティックな作風で知られる小西神士氏を迎えたランウェイショーの舞台裏を、デザイナー久保嘉男が振り返る。
毎回ショーを開催するにあたって、必ずサプライズを用意するということを意識しているのですが、スポーツエレガントをテーマにした今回の演出では、音楽、ヘア、レーザーの3つがポイントになりました。
前回のショーは、井上薫さんとフラメンコダンサーのコラボレーションによる比較的ゆったりした音楽だったのですが、今回はテーマ的にもアップテンポな音楽にしたかったので、Kireekさんにお願いをしました。僕は毎回音楽を発注する際に、ショーに来てくれたお客さんが、映画『ロッキー』を見た後のような気分になって帰ってもらえるようなものにしてほしいと伝えるんですね。そして、今回はテーマ的にもドンピシャだったので、最後に『ロッキー』のテーマを本当に使ってもらいました。
最初にKireekさんからデモを上げてもらった時に、音楽自体は素晴らしかったんですが、洋服のイメージと少し合わないところがあって修正を依頼したのですが、こちらが色々お願いしたことにとても柔軟に対応しれくれました。ショー音楽というのは、必ずしもライブにする必要はなく、あらかじめ用意したものを本番でかければ、タイミングや間などが完璧にコントロールできます。でも、せっかくショーに来てもらうからには、そこでしか体験できないものを提供したいと考えていて、ライブというのもそのひとつなんです。だから、DJの方にはお客さんの目につく場所でプレイしてもらうようにしているんです。
ヘアは、小西神士さんに初めてお願いをしました。かなり早い段階からヘルメットを使うというアイデアはあったのですが、それをヘアで表現するのは非常に大変でした。髪の毛をすべてワイヤーでつくった土台に貼り付けていて、それだけでも気が遠くなる作業なんですが、ヘルメットでありながらヘアとしてもしっかり成立しているバランスが絶妙だったと思います。また、ショー当日も、モデルがかぶるヘルメットをスイッチしたり、さらに色を塗ったりとチューンナップを重ねました。
レーザーについては、いつも演出を担当して頂いている辻井(宏昌)さんが、今回の洋服を見た上で、モダンな雰囲気を演出するために提案してくれました。ショーを未来的な雰囲気で表現する上で、最も的確なアプローチだったと思います。
毎回僕らのチームは、演劇を見せるような心づもりで、モデルの動きや視線、音楽とのバランスなどを考えているのですが、今回も直前のリハーサルで何度も調整を重ねた結果、時間が押してしまいました。特に今回は、いつも以上に詰めなくてはいけない要素が多かったので、ショー直前のバックステージはかなりピリピリしていましたね。
ショーを終えて、自分なりに手応えは感じていますが、さらに上を目指していきたいですし、ショーに来てくれた人たちが涙を流すくらい感動するショーをして、洋服の素晴らしさを伝えたいと思っています。毎回同じチームでショーに臨んでいる自分たちの強みは、回を重ねるごとに精度を高めていけることですし、生の演劇に触れた人が、もう一度見たいと感じるのと同じように、ショーを通して自分たちがつくった服を着たいと思ってもらえるような、人の意識に入り込んでいけるクリエーションをしていきたいですね。
The End