Friends05: Hiromasa Tsujii Interview Part.2

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ヨシオクボゆかりのクリエイターたちを紹介する「FRIENDS」。前回に引き続き、ヨシオクボのランウェイショーの演出を手がける辻井宏昌氏が、過去に演出したヨシオクボのランウェイショーの裏話や、演出家としてのこだわりについて語ってくれた。

久保:20年仕事を続けてきて、一番思い出深い仕事というのは何ですか?

辻井:ひとつには決められないけど、衝撃が強かったのはやっぱり会社に入って一発目の仕事かな。羽田でコム デ ギャルソンが東京最後のショーをした時で、それまで雑誌とかでしか見たことのなかったデザイナーと、自分の会社の演出家が話をしているのを見て、凄いところに来たんだなと緊張した。その後、フセイン・チャラヤンと仕事をした経験も印象深いね。あと、やっちん(三原康裕氏)のショーの時にジャイアン(長瀬哲朗氏)がスタイリストをやったんだけど、その頃から雑誌中心でやっていたスタイリストたちが入ってくるようになり、徐々にショーの中での役割分担も明確になっていった。当時から基本的に変わらないんだけど、自分はトップダウン的な考え方ではなく、必要な時に必要な人がつながっていくような関係性の中で、なるべくその核にいて旗を振るという仕事をしてきたつもりなんだよね。

久保:僕も初めてショーをすることになった時に、誰と腹をくくるのかということを凄く考えたんですが、当時から辻井さんは東コレで何本も演出をしていたんですよね。演出は辻井さんにお願いしようという話になって、当時恵比寿にあった事務所に打ち合わせに来てくれた時のことはいまでも覚えていますよ。あれからだいぶ時間も経っていますが、これまでのうちのショーで特に印象に残っているものはありますか?

辻井:エポックメイキングなものは、やっぱり炎を使った時(11 S/S Collection)だろうね。あの時は、演出家仲間にも「火を使う演出は自分にはできない」と言われたりした(笑)。デビューショー(09S/S Collection)のフィナーレもよく覚えているんだけど、特に初期の頃は、久保くんと一緒に男としてカッコ良いと感じられるものを作りたいという思いでやってきたし、DJを入れてライブ感覚でショーをするという方向性も自分の中ではしっくり来るところがあって、好きなショーはたくさんあるよ。

Spring / Summer 2011 Crazy Stunt from yoshio kubo on Vimeo.

久保:僕が最初に感動したのは、ショー会場のエントランスにライトを並べて、入り口までしっかりと演出してくれた時なんですよ。ショーの入り口ってあまりケアされないことが多いけど、そこにもおもてなしをするという意識も重要だと思うんですよね。そうした部分も含め、色んなところに意識を張り巡らせないといけない演出家というのは本当に大変な仕事ですよね。雰囲気を演出するだけではなくて、事故が起きないように気をつけたりもしないといけないですし。

辻井:いや本当にそうなんだよ。「安全第一」と書いたTシャツを作ろうかと思うくらい(笑)。以前に演出したショーで事故が起きかけたことがあって、その時はさすがに怒鳴り散らしたんだけど、なぜ演出家の先輩たちは現場であんなに怖かったのかということがそこで痛感した。周りから怖いと思われるくらいの緊張感を持って臨まないとダメなんだよね。だからといって、現場で緊張しっぱなしでお互いの腹を探り合うような関係性だとなかなか深く入っていけない。だから、適度な緊張感のバランスは凄く大事にしているし、本番中は常に瞳孔が開き続けている状態だよ(笑)。

久保:辻井さんはモデルの早出しも有名で、ショーに凄くスピード感があるんですよね。やっぱりショーは間が重要だと思うし、他のショーを見る機会があると、そこばかり気にしてしまいます。

辻井:間は本当に大事だよね。でも、例えばショーが始まる時は、音楽がフェードアウトして、照明が落ちたこのタイミングでモデルが入ってきたら超カッコ良いと自分が思うタイミングでキューを出しているだけなんだよね。ただ、それをするためにはライブ感が感じられる場所から自分が指揮していく必要がある。だからいつもオレは調光室のような場所からマスゲームを見下ろすようにショーを見るようなことはしないんだよね。

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久保:辻井さんが仕事で一番大切にしていることを教えて下さい。

辻井:自分が思ったことを考え抜けているのか、あと一歩をやり切れているのかということだけは自問自答するようにしているかな。例えば、人間の筋肉が傷めつけて再生するからこそ、強く、確かなものになるのと同じで、もの作りというのはすべてスクラップ・アンド・ビルドだと思っているのね。一度作ったものを壊すことがすべてではないけれど、本当にこれで良いのか? 手抜きをしていないか? と常に考えるようにはしている。だから、考えたイメージを必ず一度寝かすようにしていて、どこかのタイミングで考え直すんだよね。特に東コレの時期なんかは一週間に何度も本番があるから、1ヶ月前くらいから頭の中はずっと寝ていないような状態でやっていて、ぶっ飛んでいるよ(笑)。

久保:今後こういう仕事をやってみたいというものはありますか?

辻井:やっぱりオレは生涯ファッションショーの演出家でいたい。ショーよりも時間や予算を多くかけられる仕事もあって、そっちの方が表現方法は増えるからそれはそれで楽しいんだけど、洋服が好きでこの仕事をしているし、やっぱりショーが一番好きなんだよ。結局そこに戻ってくると思っているし、将来はそういうジジイになっていたいなと思うんだよね。

atom inc. Homepage: ksydesign.jp/atominc/

The End

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