Friends01: Takao Ozono Interview Part.1

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yoshio kuboにゆかりのあるクリエイターたちを紹介していく新企画がスタート。第1回目に登場するのは、ブランド設立10年目を迎え、中目黒に移転したyoshio kuboのオフィスとショールームの空間設計を手がけたSalt.大園貴生氏。前編では、大園氏のキャリアや久保嘉男との出会い、デザインフィロソフィーなどについて聞く。

久保:大園くんはどういう経緯でいまの仕事をするようになったの?

大園:僕は大学でプロダクトデザイン科で学んで、ゆくゆくはインダストリアルのデザインがしたかったんです。でも、あまりにもみんなそっちを専攻しようとして野郎ばっかりで、しかも当時は就職氷河期のまっただ中で就職が難しそうなのもあって、女の子が多いインテリアデザインを専攻したんですよ(笑)。実際にその世界を見てみると、ハイテクの椅子などが出てきていたりして意外に面白くて、大学ではそれからずっとインテリアを学んでいました。卒業後は、無事メーカーに入社できたんですが、自分が思っていた仕事とは違ったこともあって1年くらいで辞め、紆余曲折を経てgrafというクリエイティブユニットに入りました。

久保:大園くんとはその頃に知り合ったんだよね。

大園:そうですね。大阪では4、5年働いていたんですけど、次第に東京の仕事が増えてきたので、東京にも事務所を作ってもらうことになり、そこに転勤しました。当時はWOWという映像制作会社のオフィスのワンフロアを間借りしていたんですけど、そこに入り浸っていたのが久保さんだったんですよね。

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大園氏が内装を手がけたgroundfloor inc.の新オフィス&ショールーム。

久保:ホントにひょんな出会いだよね。

大園:grafでの主な仕事は店舗設計で、家具やグラフィックなどひと通り経験させてもらって、8年くらい働いて、1年ほど休んでから独立しました。ちょうどその休んでいる頃、祐天寺から事務所を移転しようとしている久保さんに声をかけられて、内装をすることになったんですよね。

久保:大園くんがフリーになって最初の仕事がうちだったもんね。スーパー低予算で(笑)。

大園:懐かしいですね。

久保:独立してデザインの仕事をやっていくにあたって、どんなコンセプトを持ってたの?

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大園:僕は「Salt.」という屋号で活動をしているんですけど、塩って料理の下地じゃないですか。店舗設計という仕事は、完成した直後は外見的な部分で評価されがちなんですけど、そこで働く人たちや、そこに存在しているモノたちの方がよっぽど重要なんですよね。そういう意味で、それらが生きる下地を作るということが自分の仕事だと思っています。例えば、この新しいショールームもすべてがむき出しになっていますけど、できるだけベースの状態を残して空間の特性を活かしながら、そこに何かをプラスアルファしていくということが、デザインする上で大切にしていることなんです。あと、僕はあくまでもデザイナーなので、お客さんを儲けさせるための計画ということも意識はしていますよ。

久保:人間的にいやらしいと(笑)。でも、経済的に凄く儲かるような時代じゃないからこそ、アーティスティックなだけでいいということではなくなってきていると思う。

大園:アーティスティックな表現を売りにしていく人もいるとは思いますけど、僕の場合は、打ち合わせに行ったり、図面も引いたり、すべてのことを自分ひとりでやっていて、職人でありたいという思いが強いんです。そういう意味では久保さんも他のファッションデザイナーに比べて仕事の範囲というのが深く、広いように感じるし、凄くたくさんのスケッチを描いている姿とかを見ていると、共感できるところがあるんですよ。

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同じく大園氏が内装を手がけたgroundfloor.inc.の旧オフィス。

久保:これまで色んな仕事をしてきていると思うけど、大園くん自身がデザインしたという形跡を残したいというのはあるの?

大園:どうやってそれを残して、自分という個性を商品として売っていこうかと悩んだ時期もあったんです。でも、色んな仕事をしていくなかで、単体で見た時にはすべて違うものに見えるかもしれないけど、全体で俯瞰した時に、僕というフィルターを通して作られたものたちが、ひとつの個性として見えてくるんじゃないかなと考えるようになりました。

Salt. Homepage: salt-inc.net

to be continued…